部屋の片隅から、
一日の終わりに向けて。
かわぐちシンゴが描いた
八つの風景を、
ありのままに写し取った
小さな短編集。
Release
その扉の向こうも
¥2,500 ( tax incl. : 配送 + ¥200 ) / 2026.06.06 / SNGK0003
1. 点と点
2. 間
3. 旅の終わり
4. 月の光
5. 僕ひとりの町
6. どこかで
7. ひとりきり
8. 夜の長いコト
かわぐちシンゴ
Produced & All Songs Written
Vocal, Guitar, Chorus
中村大史
Co-Produced & Performed, Mixed
Chorus, Guitar, Irish Harp, Mandolin, Bouzouki, Accordion
《 Guest Musicians 》
大久保 真奈 from John John Festival ( M6 : Fiddle )
中藤 有花 from tricolor ( M8 : Concertina )
長尾 晃司 from tricolor ( M8 : Mandolin )
あとがき
「 その扉の向こうも 」
このアルバムは、
ギターやピアノを弾きながら歌うシンガーソングライター
かわぐちシンゴの多彩な楽曲から、
ギターを爪弾いて歌われる曲を厳選して、
彼自身が日々を過ごす部屋でそれらを歌い、
中村がギターやハープ、マンドリン、ブズーキ、
アコーディオンの音色を重ね、寄り添わせた作品です。
彼がこれまでに見てきた景色、
聞こえてきた音、
携えるしずかな情熱、
読書家である彼が反芻した言葉、
彼を傍で支えてきた人のあたたかな眼差し、
彼がきっといつか感じたちいさなよろこびやさみしさ。
それらを、
僕らの傍にそっと差し出してくれるような、
それでいて、
その日その時の僕が抱えているものに、
ただ手を添えてくれるような、
まるで彼の佇まいそのままのような音楽。
僕はそれを、
彼との他愛のない会話からだけではなく、
こうしてのこされた音の記録によって、
ほんの少し知ることができるのだ。
「その扉の向こうに」でなく、
「その扉の向こうも」であることについて想像の世界で遊びながら、
一日の終わりに聴いてください。
中村大史
楽曲に添えて
1. 点と点
とある帰り道、美しい夕日を見た。全てがオレンジ色に染まる中、
目を細めながら佇む僕の背中は夕闇の一部になっていく。
徐々に深まる青の手前。例えそれが何時であろうとも、
この視覚的瞬間こそ一日の終わりを感じる唯一のときだと僕は思う。
2. 間
友人と別れ、電車に乗り、家に帰る。
夜を引き連れて、或いは逃げながら。
伸びていく影は町を覆い、庭先を隠し、そしてこの部屋も。
カーテンを閉めて電気をつけよう。夜が始まる。
3. 旅の終わり
楽しい旅も終わりを迎える。
確かに感じたその土地の空気は、指の間をすり抜けていく。
明日は、いつもの部屋から一日が始まる。忘れまいとしたあの景色も薄れていく。
例えもう一度同じ旅へ出られたとしても、上塗りされることのない、儚い記憶。
4. 月の光
月は常に夜空に浮かぶ。
その姿が見えなくても細くても隠れていても、そこに浮かんでいる。
誰一人として見上げようとしなくても、そこにある。
5. 僕ひとりの町
楽しく笑っていた時間は例え一秒でも持ち帰ることはできない。
しんと静まり返った部屋に帰れば、さっきまでの出来事は全部無かったことの様に思える。
広い宇宙にたった一つこの部屋だけが浮かぶ。
ああ、もしも全てが幻だったら。
机の上に置いたスマホがパッと光り、溜め込んでいた息を静かに逃した。
——また、遊びに行こうね!
6. どこかで
そういう日もある。
歩道を照らす街灯が、道ゆく車のヘッドライトがやけに眩しい。
いつもよりも下を向いて歩いていることに肩の重さで気が付く。
ため息をつく、鼻を啜る、地面に擦れる靴の音が響く。
こんなに離れた、そことここで。
7. ひとりきり
寝静まった街を横切るバイクの音。
遠くから微かに聞こえる話し声、隣で眠るあなたの呼吸。
じっと耳を澄ます度、独りを感じるベッドの上。
寂しくも悲しくもない、たった一つの夜。
8. 夜の長いコト
眠れない。
カーテンの向こう側からひしひしと朝の気配を感じる。
眠らなきゃ、眠らなきゃ。
数えた羊はそこら中で戯れていて羊飼いが埋もれている。
焦りに焦った次の瞬間、突然辺りは昼手前。
いつの間に眠っていたのだろう。ふわふわしている頭の中で考える。
さっきまでの眠れない時間も、もしかしたら夢だったのかもしれない。
長い長い、夢。長い長い、夜の夢。
とりあえず頭が冴えるまで、もう少し横になっていよう。
「 記録 」
このアルバムに描かれているものは、
この部屋に在る一日の終わり。
いつもの椅子に座り、
いつもの机に向かい、
いつものギターを抱えて、
マイクの振動板を揺らして。
ひとつひとつを爪弾くままに口ずさんだ8つの歌は、
絵葉書をやりとりする様に中村大史の手に渡り、
柔らかい音の粒が添えられて戻ってくる。
私はその絵葉書を小棚に飾って
時折こうして眺めている。
きっと、その扉の向こうも。
ここに在る、
あの日の帰り道が、夕焼けが、夜が、想いが、
淡く広がり誰かの今日をそっと抱きしめている。
願わくば、その音の一つになれたなら。
かわぐちシンゴ